将来私はストリッパーになると思う
そう予想してくれた小学校の同級生
彼女とはその後会うこともなく
ただずっと年賀状だけのやり取りが続いている
恐ろしく長い年月である
彼女は小学生なのに
老成していて 背も一番高く
体格が良くしょっちゅう高校生に間違われていた
同じクラスに
超高齢出産の一人っ子で超過保護
その母親のせいで
いじめられていた森川君がいた
その母親はお婆さんみたいだった
私もからかった
高学年になっても学校に迎えに来ていたし
公園にも付いて来ていた
六年生の時
その森川君の母親が何をとち狂ったのか
教室に怒鳴り込みに来たのである
鬼のような血相で詰め寄った相手は上記の彼女だ
皆は凍りつき
ただ呆然と立ち尽くしていた
「森川君をいじめたのあんたでしょ!」
と自分の子を森川君と呼ぶ完全にいかれた母
目は釣り上がり
今にも誰かを食いそうな形相だ
こんな恐ろしいお化けに詰め寄られて
泣き出すんじゃないかと
我々は心配した
しかし背の高い彼女は微動だにせず
老婆を見下ろしながら
「いいえ やってません」
と平然と言ってのけたのである
我々の母親に対する恐怖は何処かに消え
ただもう彼女の度胸に度肝を抜かれた
「森川君が言ってたんやから間違いない
森川君に謝りなさい」
「やってないものに謝るつもりはありません」
「森川君が嘘つき言うの?」
「わかりません」
「早く謝りなさい!」
「謝るつもりはありません」
完全に森川母の負けである
老婆の怒鳴り声で担任が駆け付けた
担任は老婆を連れて出て行った
我々アホ連中は拍手を送り
凄いなぁ 強かったなぁと言ったが
「そう?謝る理由がなかっただけやん」
と涼しい顔で答えた
そんな強烈な過去を持つ彼女は
独身で銀行員で一人暮らし
毎年来る年賀状は海外旅行に行った写真や
寄る年波には勝てないと言った内容であった
しかし今年の年賀状を見て
私は愕然となった
深夜のTVショッピングか
ニッセンの通販で買ったような
何とも言えない女の子の人形の写真
そして
私ネルちゃん
旧年中はうちのまこちんがお世話になりました
今年もよろしくネ
と書いてあったのだ
彼女は完全に崩壊してしまったのである
彼女は背が高く体格も良く真面目で
顔は少し内館牧子に似ている
銀行では恐らくお局様やオールドミスと
呼ばれているであろう
女ゆえに出世も叶わず
男性社員からの扱いも想像がつく
新年早々胸が張り裂けそうになった