玄関のチャイムが鳴る
「奥さん 
全国紙のことでちょっとお時間戴けませんか?」
中年男性の声である
声にスゴ味がある
どうやら相手は玄関を開けて欲しい様子
全国紙とは?と
意地悪に聞く
「全国紙言うたら読売 朝日 毎日 産経ですやん
奥さん知らはれへんの?」
と来た
もうこの時点で営業は失敗している
「全国紙の意味は分かっておりますが
全国紙のことでお話がと言われても
そちらの用件が何かが分かりかねます
もう少しこちらに理解出来る様におっしゃって下さい」
と相手の言いたいことは十分分かっていながら
どこまでも意地悪に答える
「すんません 何せ素人なもんで」
かなりの年数をこのドスの効いた声で
一般の人間が避けて通るであろう仕事をしてきたのが
丸分かりなのに謙虚なおじさんだ
「ええ ですから単刀直入におっしゃって下さい」
あまり調子に乗ってからかってはいけない
控えめに控えめに
「はぁ 読売ですねん」
「でしたら最初から読売と名乗られるべきではありませんか?
全国紙の事でなどと遠回しな言い方をされるのは
営業するにあたって効果的ではない様に思いますが」
ドスの効いた声の人には私は謙虚だ
「えらいすんませんな シロウトなもんでね」
と怒って帰られた
こんな可愛い小娘の質問にいちいち怒ってたら
中々契約取れへんのちゃいまっか
短気は損気でっせ