仁和寺の九所明神本殿が修復工事を終え
360年ぶりに江戸初期の創建当時の極彩色文様を
蘇らせたというニュースを見て出かけた
ここの境内は広く
我々夫婦はうろうろ探したが
九所明神本殿がどこにあるのか分からず
拝観料を払う小屋の女性に聞くことにした
「私アルバイトやから分からへんにゃわ
そんなんニュースでやってた気もするけど
アルバイトやから分からへん
事務所行って聞いてもらえる?」
と その40歳位で小太りの女性が答えた
ええの?ええの?
そんなんでええのん?
自分がバイトしている寺が
ニュースになっているにも関わらず
参拝客に聞かれるであろう事も予測せず
堂々と私アルバイトやから分からへんとのたまう
私はブスでスタイルが悪い
おまけに恐ろしく頭も悪い
この三つの条件だけで十二分に悲劇である
もう人生の勝負はついている
それなのに髪の毛は
台風が来てもびくともしない程の剛毛であり
百姓の様な手をしている
神も仏もいない
平等や公平など絵空事であるとの思いは
子どもの頃に身に付けた
これを身に付けたお陰で
我が身に降りかかる数々の不幸に対して
何故?などという愚問は抱かず
仕方がないと割り切って生きて来られた
そして降りかかる不幸の数を少しでも減らす為に
相手を不愉快にさせない様に心掛け
愛嬌を振りまく努力をしてきた
外見で世間からシャットアウトされる女が
生き残るには地道な努力が必要である
彼女もかなりの努力が必要なタイプである
断言する
それなのに
「私アルバイトやから分からへんにゃわ」だ
ええの?
そんなんでええの?