遥か昔にドイツに行ったことがある
その時の印象は
おもろない国やんけであった
見渡す限り普通の家の窓と言う窓がピッカピカ
もうそれだけで私は息が詰まりそうになった
食事は不味い
人々の顔は陰気
男も女も皆デカイ
愛想のいい人間に出会い
話せばイタリア人だったりした
一生縁の無い国だと思った
それがひょんなことから一昨年
ドイツ人をホームステイさせる事になったのである
ドイツ人と聞いて嫌な感じがしたが
断れずに引き受けた
ベルリンに住むクラウディアと言う女性で25歳
英語が話せる
予定は一週間
それ以外の情報は無かった
ベルリンて旧東ドイツやん
嫌な予感はしていた
彼女が我が家に着き挨拶となった
私は「こんにちは 私はジュリア・ロバーツよ」
と言った
彼女は表情一つ変えない
初手から大失敗である
我が家のリビングにはオウムがいる
他にもケージに入った鳥が3羽
サルがケージに入っている
当時は犬が8頭いた
カメもカエルもタランチュラもいた
彼女はそのリビングをぐるっと見回し露骨にイヤな顔をした
「動物はお嫌い?」
と聞くと「大好き」だと言う
では何故そんな顔をするのかと聞けば
「私はビーガンである
ケージに動物を入れて飼うのは見たくない」
ビーガンて何やねん
毎日サルはケージから出して遊んでまっせ
と言ったが彼女の表情は変わらない
何やねん この女
ビーガンを調べると あらやだ
絶対菜食主義者
牛乳も卵も食わん
動物性の素材を用いた靴衣服も身につけない
と書いてあるじゃありませんか
カルト教団やん
初めに言えよ そんな大事なこと
聞いてたら間違いなく断ってるっちゅうねん
詐欺ちゃうん それ
じゃ晩メシはどないしたらええねんと聞けば
野菜なら食べるとぬかす
部屋をあてがいメシが出来たと言うとここで食うと言う
どうやらケージに入れられた生き物を見るのがおイヤらしい
物凄く重い空気が我が家に充満している
風呂場に電気が点いている
なんで勝手に入っとんねん
「お先にいただきます」ちゃうんかい
朝も黙って出て行く
帰って来ても何も言わずに自分の部屋に行く
仏の心を持つ私だが怒りも頂点に達すると
人間性そのものが消滅する
メシを作るのを止めた
彼女は4日後の早朝
手紙を残して消えた
「黙って帰ってごめんなさい
しかしあなた方は私をもてなさず
非常に寂しい思いをさせた
だから私は出て行くのです」
と書いてあった
万歳三唱した
ドイツに行った時に感じたモノは間違いではなかった