頭のおかしな人間の怖さは嫌と言う程分かっている
状況も理屈も通じない
関わらない様に生活する事以外無いのも頭では分かっている
近所に何人もいる事も分かっている
しかし現実に私に降りかかると冷静に対処が出来ない
日頃ニュースを見ては
触らぬ神になんとやらと口にしながらである
先日散歩の帰りに
私より50メートル程前から
「しっ しっ」の声が聞こえた
私は目が悪い
しかも夜の11時半
人の形は分かるが何の事だか分からない
歩き続ける私とその声の距離は縮んで行く
どうやら「しっ しっ」の声は私に向けられている
見れば50代のおっさんとポメラニアンと言う犬種のカップルだ
そのポメラニアンはウチの犬に向かって唸り吠え出した
私が連れているのは7頭
向こうは小さな1頭
しかしだからと言っておっさんに公道で
「しっ しっ」言われる筋合いは無い
おまけに手で追っ払うジェスチャー付きである
随分前に歩いてたからそのまま歩けば距離は保ったままちゃうん
なのにおっさんは立ち止まって私に
「しっ しっ」と言うもんだから
とうとう私の前におっさんが立ちはだかる格好となった
当たり前だ
我が家に戻るにはここを曲がらなければ遠回りになる
こんな時の私は触らぬ神になんとやらは
すっかり何処かに飛んでしまっている
遠回りなんて頭の片隅にさえ浮かばない
怒りの沸点が低い浅薄な人間なのである
私は仁王立ちになりおっさんを睨み付け
無言で「そこどかんかい」のポーズを取る
ポメラニアンはうるさく吠え続けている
おっさんが何か言えば「なんやと ごるぁ」
と言うつもりでいた
機関銃の様に文句を言うつもりでいた
しかしおっさんは私の覚悟を無視し道を譲ったのである
何やねん 何も言わんのかい
家に着き犬を中に入れながら表を見ると
なんとおっさんが立っていた
そして私をじっと見ている
後を付けられていたのである
私と目が合うとおっさんは何処かに行ってしまった
おっさんがどこの人間かは知らない
しかしおっさんは私の家を知っている
己の馬鹿さをまたしても思い知る
後日知人から
昼間に公園の子どもの集まる砂場に来て
子どもが犬に近寄ると
「触るな 来るな あっちいけ」
と怒鳴り散らし子どもを泣かす
ポメラニアンとおっさんのコンビである事を知らされる
完全に頭のイカレてるおっさんを相手にして
あほちゃうと馬鹿にされた
ごもっともなご意見である
君子危うきに近寄らず
分かってはいるんです 冷静な時には