甲状腺のう胞の液を抜いた
針を刺され痛いのを我慢していると
あれ こんな粘っこい液初めてやわ 全然抜けへん
悪いけど太い針に変えてええかなと医師が聞く
抜けないモノをいつまでも刺されていてはこっちも堪らない
はいと答える
横の看護師にガンバレと声援を贈られる
頑張らなければならない程の事かと緊張していると
ぶすっと音が聞こえる
太い針が入った事を実感した
物凄い違和感である
医師がごめんね ごめんねと何度も詫びる
いえ そんなと答えると
あ 喋らないで 針が動くからと言われる
どうせぇっちゅうねん
長い時間をかけて13㏄を抜いた
見れば酢豚のあんかけの様な色と粘り具合である
美味そうでさえあった
また溜まるであろうと言われる
こんな思いをまたしなければならないのかと憂鬱になる
甲状腺の中に腫瘍が出来
それが溶けたのがこの液体だそうである
さらさらの液体は心配ないそうであるが
私の様な酢豚のあんかけはガン化しやすい為に
定期的な検査が必要だそうだ
病気と無縁の人生を送ってきた私は周囲から
「鉄の女」と呼ばれて来た
可愛げのカケラもない屈強な女として位置付けられていた
それが今回の事でほんの少しばかりの同情を買った
こそばい
連れ合いは検査の結果を聞くために仕事を早退までしてきた
高々首の腫れ物でこの動揺である
ついて来なくていいと言うのを振り切り
診察室まで一緒に入り看護師に笑われる始末である
連れ合いが医師に
一度人間ドッグに入った方がいいですよねと聞いた
あんなもん入ったってガンは見つかりませんよ
PETでも見つかりませんし心配したってキリありませんよ
今は治療が進んでますから 症状出てからでええと思いますよ
とさらっと答える
この医師をいっぺんに好きになった