好きな作家に帚木蓬生がいる
彼は現役の精神科医であり作家である
彼の文体は非常に真摯であり
人間のもろさを医学の知識と併せて表現してくれる
彼の本を読む時は自然に背中が伸びている
何故か寝ながらとか 肘をついて読む事が出来ない
中でも「逃亡」は正座でなければ失礼ではないかと思う程である
何度も声を出して泣く 
それも背筋をぴんと伸ばして泣くのである
しかし全ての作品が好きかと言えばそうではない
恋愛をモチーフにした作品は全く面白くないのである
「空夜」や「空山」は悲惨であった
正座をしたくなるような
息を凝らして文字を追う様な
そんな文体をお慕い申し上げ
その心意気でページをめくるのだが
軸になるのは恋愛である
文体はいつも通りに真摯でありながら
男女の営みを詳しく書いている事が多々あるのだ
彼の文体と性描写が私には噛み合っていないように思えて照れる
登場人物が皆滑稽なほど真面目であり
その真面目さにセックスが絡み合う様が
非常にギクシャクしている様に思えて
読み手である私は堪らなく照れるのである
自然な感情の移行が計れない
この感情は結局作品が面白くないと言う形で終わるのだ
詰まる所私は恋愛モノが大嫌いなのである
男女の感情の起伏など全く興味が無い
帚木先生
作品に恋愛を絡ませるのは他の作家に任せて
硬い硬い文体の路線を貫いて戴けませんか
好きな作品とそうでない作品の差があり過ぎて
読後のがっくり感が辛いです